『ボク』/うんち
哀しみはない、喜ぶこともないけど、自分がこの家に戻ってきていることがそこにある事実。
家を抜けていくシーンは容易だけど
街の中に敷き詰められた道や鉄道の間にひしめく
打ちっぱなしのコンクリートの中に
大勢の人の流れの中、無数多様の朝ご飯と昼ご飯と夜ご飯を、誰か決めた人と一緒に食べている
その毎日の感触が
あまりにも安定に乏しかったので、とりあえずここに帰ってきてしまった。
この丘の上のみどりいろの世界にいて、都会の重力にあえて引っ張られてみる。引っ張られるのは悪くない。むしろ楽しい。冒険だ。
〈続く〉
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