instinct ?花蘇芳?/涼深
――しゅるり。
白いシャツが微かに鳴いて
仄かに上気した首筋
淡い名残の花
貴方は未だ気づかぬ儚い枷
――とくり。
夜気に熱を奪われて
冷えたシャツ越しに
ゆるやかに波打つ鼓動
貴方が息づく不確かな証
戯れに口づけ
徒(いたずら)に指を這わせ
偽りに繋がる
不誠実な温もり
高揚する細胞
モノクロの部屋に射しこんだ光
歪む像を映すのは
見知らぬ誰かの契り
形ある枷など
貴方に不似合いだから
銀の約束に
唇を寄せた
――とろり。
また一つ、
境界線が消えていく
確かなものは何もない
善悪さえも
情愛さえも
裏切る貴方が愛おしい
花蘇芳(ハナズオウ)
花言葉 : 「高貴」「質素」「不信仰」「裏切り」「疑惑」「豊かな生涯」「目覚め」
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