林檎のある浴室/リンネ
 
 自宅の風呂である。いつから浸かっているのか、まるで思い出せない。ひだ状に醜くふやけた指を見れば、どうやら相当の間ここにいたということが分かるが、それにもかかわらず、私は、一向に風呂から出ようという気持ちにならずにいる。
 そしてそれはどうも、すぐ目の前にいる女のせいであるということが分かっていた。向かい合わせに浴中で座っているが、まったく黙りこくっている。何かに怒っているのだろうか。どうしてこのような状況にあるのか分からないが、石鹸の香りに混じって、女の体臭がかすかに感じられ、それが私をこの場に引き止めているようである。

 浴室はしだいにふんふんと湯気に溢れている。その様子がどうもおかし
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