会いに行くよ/寒雪
 


出歩くたびに
懐かしい風景や光景に出会うと
僕は心のファインダーを覗いて
素早く音のないシャッターを切る
撮った写真には必ず写るはずのない
きみの姿をした心霊写真


秋の紅葉の静寂な陽光にも似た紅さ
春の新緑の雄弁なそよ風にも似た軽やかさ
冬に見る葉が落ちていなくなった樹木
夏に聞く入江の同じリズムで響く潮騒
そのすべてに
鮮やかだった頃のきみがいる


きみはもう
今頃墓の下で肉体も朽ちて
文字通り土に還って
掘り返してもわからない
けれどもきみがいた日々の
色づいた想い出は
その場所その土地を訪れる時
心の写真を通して
今もカラフルに心の中に蘇る


動くことが叶わないきみの想い出が
寂しがることのないように
心の中にいるきみが
笑いかける映像を思い出せるうちは
きみに会いに行くよ
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