地底の産声/鶏卵
 
と生まれるのか、
それともふいに上を目指し
支えをうしなった横土に窒素させられるのか、
いやきっとその前に朽ちてしまうだろう と
ぼろぼろに汚れた右手を暗闇で見つめ
いつしか井戸に落ちた記憶を探ってみるものの
たとえば次に掘り進んだ瞬間に
さらなる井戸が「わたし」を待ち受けることをおそれ
そうしてここに屍のない理由を
ごくごくわずかに見いだし始めた

だから「わたし」は胎児のように
丸まってすすんでいるのだ
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