地底の産声/鶏卵
井戸の底には穴が空いていて、
そこはどこへ通じるのだろう と
ぬめる穴ぐらを進んだ先が
知らぬ間に埋もれていて知らぬ間に掘り進んでいて
けれど決して上に登ることがないのなら
果たしてその横穴はいったい誰が
そしてなぜできたのか
どこへ行こうとしていたのか、
わかりもしないことを考えることでしか
屍すらない沼の穴を進むための
力を得ることができず
もとの井戸へかえろうにも
進む後ろで土は隙間をつぶしていき
「わたし」はゲル状のカプセルにつつまれた
胎児のように産道を探しているようで
柔らかで鋭い泥土をかきわけ
ぐうるりと引力に導かれた確実な曲線で
ついには井戸へと生
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