ニコラシカ/智鶴
 
初めて幻を見つけたのは
君が歪んだ空を息に含ませて
その吐息で僕を掻き消した頃だった
遠のく景色の奥の方で
誰かが僕を呼んだ気がした

何も知らないふりをして
君のコートを腕に巻いた
お好きなようにと笑う君と
目を伏せて腕を差し出す僕と

夜明けに並べた嘘が
懐かしい香りに消えてしまう
奇跡みたいに
軌跡みたいに
君の嫌いな香水の
甘く苦しいブルーみたいに

灰皿に少しだけ砂糖を落として
甘い感情を灰に塗して

何か一つでも
君の嘘を、
君の手にしたグラスの色を
暴くことが出来たなら
ライムの色をした真実を受け入れずに
お互いに違わない嘘を吐き続けられたのだろうか

それも嘘
きっと嘘
青い月の入った右手を翳して
君は言ったね
「こんな薬は効かないわ」


永過ぎる別れを告げる前に
レモンの帽子で乾杯を

甘すぎたかも知れないね
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