ある徘徊譚/リンネ
 




少し遅れているが、それはいつものことである。待ち合わせのレストランまで、バスに乗っている。乗客はすでにほとんど降りてしまった。もうそろそろだろうと思い、手元のブザーに触れると、無数の赤いランプがまったく同時に点灯した。おやッ、なんとなく外を見てみるが、まるで見覚えがない景色である。…レストランはもう通り過ぎてしまったのだろうか。これではますます約束の時間に間に合わない。憂鬱な気分に浸りながら、バスが停止するのを待っていると、運転手がいつのまにか隣に座っていて、

「ぎりぎり、間に合うか?」
「そう、そうかもしれません」
「どこへ行くんだ?」
「もうじき、ですね」


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