足跡/寒雪
同じ動きをトレースしながら
白い泡を口から噴き出し
穏やかに波は通り過ぎる
海風に撫でられていつでも
湿気のコートをまとった
重い砂の上を二人は歩く
景色を見ているわけでもなく
目的地を目指しているわけでもなく
足跡はただ
二人の後をただ無口に追いかける
太陽の天然な明るさを
肌で触れることが出来なくて
どれくらい時計の針が回ったのか
意地悪く足を掬おうとする砂の
足元に伸びる手を蹴散らして
空を見上げる二人
キャンバス一杯に描かれた黒い雲は
見ている二人の心を巣食う
隙間にねじ込まれた闇の風景
ふと目線を下げると
いつの間にか
一つだった足跡は双子になった
少しずつ離れていく距離
手を伸ばしても
背姿を抱きしめることが
最早難しくなった
縮まらず広がるだけの足跡たちを
波はやはり白い泡を噴いて
二人の耳を塞ごうと潮騒を奏でる
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