手をめぐる文学的断章/葉leaf
 
手は内側を流れる音楽を運動に変換して紙の上に文字としてしたためる。紙に落ちる手の影は皮膚の内側の湿潤で深く染め上げられている。私は友に手紙を書いているのだ。友は声として仕草として視線として輪郭として色彩として柔らかく統一され私の中で拍動している。私と友との間を交通する感情の列は手の中の音楽の流路をひらく。私の骨は友を呼び続けるがその呼び声は空間の溝にはまり込み無意味な温度と化す。手は腕からの独立のために戦争の準備をしているわけでもない。手はむしろ同盟とは呼べないほど自然な共闘関係を腕と結んでいるのだ。私は手紙を書き終えることができるだろうか。手は内なる音楽と戦うのをやめそうにない。

群集が拍
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