林檎もぎ/砂木
 

もぎ取った林檎を肩からかけた籠にいれつつ
葉っぱしか残らない枝から空が広くなっていくのを
地面からしか登れない木が 重みから解放され
葉が役目を終えて 黄色に黄緑に色づいて
風にちぎられるままになっていくのを
家族の生活を支え 糧になってくれて
さようなら ありがとうと 毎年 見送り

さあ 最後の一個に手をかけて
空から見れば 黒点だった物を獲り終えた
ぽかりと覗いた青空
この林檎を持って 私は宇宙には行けないけれど
あの青空の向こうに 今は居る人々も
きっと喜んでくれている

収穫が終わる頃になり 急に体が痛くなったと
父母が愚痴を言い出す
ほっとして気が緩んできたのだろう
早く寝て休めとしかいえないけれど

林檎畑の木々はこれから雪を迎え 冬の陣に変わる
豪雪にならないように空を見上げる
裸木に宿る生命の炎が どうかたえませんように



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