家事手伝い/朧月
 
いつかは死ぬのにね
母が言ったからどきりとした

いなくなった恋人を
そろそろまた恨み始めていたから

母は
死ぬということと
家の中のあれこれとを
同じところに平気で並べる

夕食まえのテレビでは
かわいそうな子供の話を流していた
母の
記憶の中の私は
どのへんから鮮明なのだろう

母はいつも子供のころの
話をするのだが
いつの時代の話なのか
わからないまま終わる

母と私が並んで作った
夕食を食べるときには悲しい話は
しないルールになっていた

ときおり奇跡的に
おいしい味になっていて
隠し味になにを入れたのと
きいても母は首をふる


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