花言葉/殿岡秀秋
「見つけると幸せになれるのよ」
近所の女の子がいう
四つに分かれた青緑の草を数本持っている
これでわたしは大丈夫だわと
少女の眼は語る
ひとつわけてほしいが
胸の前でしっかりと葉を持つ少女にいいだせない
ぼくは自分で見つけなければならない
千住神社の能楽堂につづく道へ
勝ち誇ったようにスカートをゆらしながら
少女は去る
神社の裏手の草むらにしゃがむ
どれもこれも三つ葉しかない
ぼくの未来はどうなってしまうのだろう
胸にクローバーの形の穴があいて
秋の風がとおりすぎる
オフィスの昼休みに
子どものころの願いを叶えたくなって
雨上がりの日々谷公園の心字池のほ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)