花言葉/殿岡秀秋
 
「見つけると幸せになれるのよ」
近所の女の子がいう
四つに分かれた青緑の草を数本持っている
これでわたしは大丈夫だわと
少女の眼は語る
ひとつわけてほしいが
胸の前でしっかりと葉を持つ少女にいいだせない
ぼくは自分で見つけなければならない
千住神社の能楽堂につづく道へ
勝ち誇ったようにスカートをゆらしながら
少女は去る

神社の裏手の草むらにしゃがむ
どれもこれも三つ葉しかない
ぼくの未来はどうなってしまうのだろう
胸にクローバーの形の穴があいて
秋の風がとおりすぎる

オフィスの昼休みに
子どものころの願いを叶えたくなって
雨上がりの日々谷公園の心字池のほ
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