私は何もわかっていなかった/オイタル
ドアをこじ開けて
落ち葉の溜まりに足を下ろし
腰を下ろした
すべては自分の
過ちだった
薄いワイシャツを羽織りながら
私は息を吐いた
明け方
左手に風が沈黙を守り
右手に信号の無残な点滅が続く
黄色い
獣はおびえていた
おびえて
気配を探っていた
私は
張りつめた空に向かって銃を撃つ
打ち抜かれる雲
木々の輪郭が崩れる
獣はおびえて襲いかかる
私の瞼に 黒い傷
獣の脚に ナイフ
指先に噛みつく
獣の白い牙
(それを噛ませておけ)
望んでいたのは一杯のスープ
牙の隙間の赤い舌先が
ゆっくりとなめる
鳶色に光るスープだ
空気の溜まりを掻きまわしたのは 私だった
おびえていたのも
私だった
吠える私の眼の裏で
何かがようやく
着地を始める
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