Queeeeeeeeen/salco
り中の様子は窺えないが、
白大理石の床には白貂なのか敷き皮の一端が見え、高い天井は窓明りを反
射して暖気の溢れる居心地の良さが知れた。
ややあってあの不思議な声がゆるゆると漂って来た。
「一体にそちは厚かましい女よの。首一つで転がるところを路銀までつけ
て送り返してやろうと言うに、えて勝手な無心をしおるとは」
再び脳髄の心地よい痺れを感じながら女は、音の強弱ではなく薫香のよ
うに遠くへ伝播し、鼓膜でなく頭蓋を透過して来るようなこの声を、瓶詰
にでも出来たら一体どれほどの財になるだろうかと考えた。すると傍らに
立つ先の男が驚くべき速さで女に訳した。
「はい、女王様。実
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