Marking/寒雪
そばにいる
おまえから漂う臭いを
おれは嗅ぎたい
手を伸ばしても
おまえの体に触れられないように
おまえの無臭な体は
おまえを不用意に遠ざける
冷蔵庫のボンレスハム
どぶ川のヘドロ
道端の犬のふん
商売女の香水
どうだ
己という存在を
おれに見せ付けようと
鼻の穴に殺到してるだろう
おまえからは
おまえという臭いを感じ取れない
そばに立っているおまえは
蜃気楼のまがい物
いつまでたっても
おれの手の平になに一つ得られない
たとえ小便の臭いでも構わない
それがおまえを手繰り寄せる
扉を開く鍵となるのだから
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