約束/相田 九龍
明日になったら帰ろうね、と僕らは約束した
積み上がったティッシュを見て、汚いなと思った
夕暮れが何度も部屋を照らした
その間、一度も夕陽を見なかった
そんな夜を何度も過ごした
かじりっぱなしの煎餅が、いつしかふやけていた
携帯が重そうに身震いした
雑音が転がった部屋で煙草に火をつけた
写真立てに僕はいなかった
新世紀が奇妙な歯車を回した
歪みはいつしか当たり前にそこに在った
当たり前が変わって行った
それが当たり前だって新世紀が言った
記憶には断片ばかりが積み上がった
それを見て、汚いなと思った
明日になったら帰ろうね、と僕らは約束した
それが無理だと僕らは分かっていた
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