営む女/朧月
 
母は黙って
何層もの小さなレースを
縫い付けていた
私たちの家庭に

あらゆる窓が
母のつくったレースで埋め尽くされても
黙って縫い続けた
私たちを見ずに

母は
母であり続け
私たちはそんな
母のつくるレースの
やがて一部になるのだろうか

父はとうに父を放棄し
姉ははじめから天使のようであり
私はなにかを期待されて生まれたのだが

編むという作業をくりかえしくりかえし
母は母の顔をした
ただの営む女になる

娘という文字から
良をとり縫い付ける
レースの隅に
ただの女になって

私は母のレースを受け継ぐ
営む女になる




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