立冬月の秋のこと/小池房枝
不思議
星たちが年に一周する間にも月はビュンビュン満ちたり欠けたり
三日月に凛々しく見える横顔に見惚れて階段一つ踏み外す
耳をすませ降りだしたかなと呟くと急にうるさく騒ぎ出す屋根
家の灯を映す川にはカモたちの影が静かに行き来してます
朝顔の終わった夏のプランターの土をあけたらヤモリが一匹
分かつ風か禍津風(まがつかぜ)せめて人々に異言の祈りや呟きを運べ
朝ごとに部屋に低く深くなる朝日やがて朱色に光る下駄箱
落ちる前も落ちて来るまもその後もカサコソ遊びのユリノキの並木
焼きたてのスコーンを出せば客人は「あんたほんとに小麦粉好きねぇ」
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