粉雪 / ****'03/小野 一縷
 
 針の跳ぶ音

洗練された技法
犯罪的な手法
手さばきの 速さは冷たい

発信 誘ってる 苦味
アナログノイズの美
ヒプノティックなリピート
白く 泡立つ 冷たい高み

乾いた リズム
湿っぽい 鼓動より
タイトに 回る円
回転 
映画のフイルム・ワーク並に
切り貼りされる

リズム イズ リズム
鼓動の裏と表の中間だけに 潜む響がある
それを指揮棒で 操るのが指揮者
それを針で 穿り出すのが犯罪者

犯罪者は 眠れない
昼 鼓動を途切れさせては 
失神して 身体を休める


罠 ?

待って

誰 ?

雪原を 駆けてゆく 白い影
地平線の 光の 奥に 
滲んで 消えてしまった 
 
彼 ?

何度も此処へは 来ている筈なのに
呼び止める 言葉を 未だ持てずにいる

名前すら ついていない 彼を





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