イチブ/朧月
ふいに
窓の外の落ち葉が
気になった
口をあけながら
歯科の椅子の高さは
空中に浮いているようだったから
がさつ
という言葉が浮かんだ
繊細を願うセンセイの指に
小さめの紙コップを
そっとそっと握る
機械音をそばにおいて
心も浮遊してゆく
だれのものでもない空間は
そんなタマシイが集まってた
白いタテモノの羅列は
住宅街の宿命
夕焼けすらも忍び寄れぬ
街角の死角
私自身のイチブブンは
機械により削り取られる
自覚もないままのなにかが
すでに侵食していた
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