イチブ/朧月
 
ふいに
窓の外の落ち葉が
気になった
口をあけながら
歯科の椅子の高さは
空中に浮いているようだったから

がさつ
という言葉が浮かんだ
繊細を願うセンセイの指に

小さめの紙コップを
そっとそっと握る

機械音をそばにおいて
心も浮遊してゆく
だれのものでもない空間は
そんなタマシイが集まってた

白いタテモノの羅列は
住宅街の宿命
夕焼けすらも忍び寄れぬ
街角の死角

私自身のイチブブンは
機械により削り取られる
自覚もないままのなにかが
すでに侵食していた


戻る   Point(3)