背中で語る/yumekyo
 
無職無芸の自分に向けられた罵詈雑言に 
ヘラヘラヘラと冷笑を以て返すのが 
心底辛くなったから 
田舎を出てきた
そしてわたしを差す黒い指を 
そのつどへし折って へし折ってきながら 
ペコペコと下げる頭の裏で
悔しさに歯を食いしばり 食いしばりながら
ここまで来たんだ
わたしの名前の横に肩書きが添えられ
部下もついた
わたしがある若い職員に注意を与えたとき 
彼は至極あっさりと「はい」と答えた 
魂の抜けた様な言い方がどうしても気に入らなかった 
わたしは思わず  
彼をなじってしまった 
男には 
背中で語ることがあるとは 
くさいせりふのようだけども 
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