ねじ穴と球体/魚屋スイソ
 
 おんなが死んだ。顔のない恋人だった。
 ミルクを垂らすと、時計まわりに渦をまいて死んでいった。
 まんなかにあいた穴が部屋に生息していたものたちをみな吸い込んでしまったので、おとこはだれとも会話をすることができなくなってしまった。
 おんなは汽笛のような断続的な悲鳴をあげながら、細くねじれてゆき、やがて線になった。ねじがまわるにつれ、穴からおんなのしぼりかすがぼたぼたと噴き出てきて、床や食器や男の顔をぬらした。ひとしきり排出し終えると線はまもなく点になった。
 残されたおとこは、おんなのしぼりかすをあつめてボウルに入れ、ていねいにラップをかけてから冷蔵庫にしまった。壁やシーツに飛び散り、
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