返歌/三田九郎
 
い感情があり

感情とも呼べない

ためらいやいらだちが溢れ

彼は路上で歌い

女は酒場で涙し

僕は空き缶を蹴り

乾いた音にため息をつく

キャンバスは排煙に燻され

青白かった頃の痕跡は消え

明日は見えず

捨てるわけにもいかず

いつもの空がまた遠くなる

君はいつまでそこにいるんだ

ぼんやり眺める僕の視線に

今夜も彼はそう返歌した
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