ガラスが割れた/紀田柴昌
 
ガラスが割れた

ステンドグラスを一つ一つ溶かしていく
溶けてなくなる事を惜しみながら

最初、光がすべての色を透過していた
私は、それを一つ一つ消化されることを 知っていた

溶けていくことが 快感なのか
溶けて消化することが 快感なのか

右手は、しっかりと その破片を持っていた
口の中で、破片は ゆっくりと そして 確実に溶けていく

はっきりとした意識が それを行っていた

赤や黄色、緑や茶が、口の中で混然一体となり 溶けていく
口から逃げようとする
それらの色が やがて 白一色となる
そして、空に消えて行く

快感が やがて焦燥感へと うつりかわり
口からなにも なにも 吐き出される事が なくなった時

はっきりと より一層はっきりと ガラスが割れた
そして ガラスは蒸発し、白と黒の煙と化して
溶けて なくなった

寝ることを強要するように



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