ナスさんトマさん in DEEP/ヨルノテガム
 







 キュウリ空の晴れやかなある日
 魚々しい海へ旅して出ようとナスさんが言う
 こんな世の中じゃあ 生きていたって仕方ねえ
 せめて旅に出て草枕、野菜らしいおナス人生を
 送りたいものだ
 それを聞いていたトマさんは思う
 この世は肉々しい泡沫の抜け殻、かじられて捨てられて
 かじられて捨てられてを繰り返す
 交わりさえ虚無な果かない幽霊だ
 意志のない混濁と実を結ばない思いつきが病の間に
 渦巻いている
 この赤い果肉さえも恨めしい
 トマト道は転がり出すばかりさ、一緒に行こう
 ナスさん、この世の跡形を探しに行こう
 ナスさんトマさん歩き出
[次のページ]
戻る   Point(3)