ナスさんトマさん in DEEP/ヨルノテガム
キュウリ空の晴れやかなある日
魚々しい海へ旅して出ようとナスさんが言う
こんな世の中じゃあ 生きていたって仕方ねえ
せめて旅に出て草枕、野菜らしいおナス人生を
送りたいものだ
それを聞いていたトマさんは思う
この世は肉々しい泡沫の抜け殻、かじられて捨てられて
かじられて捨てられてを繰り返す
交わりさえ虚無な果かない幽霊だ
意志のない混濁と実を結ばない思いつきが病の間に
渦巻いている
この赤い果肉さえも恨めしい
トマト道は転がり出すばかりさ、一緒に行こう
ナスさん、この世の跡形を探しに行こう
ナスさんトマさん歩き出
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