袋の中で思想する/紀田柴昌
 
肉体が ガラガラ とうねりはじめる
ガラスの破片が そらじゅうに ばら撒き始める

必死に、目を 足を 手を 口を 脳髄を かきもどそうと
倒れた体で かき集める

からだじゅうが ガラスの破片で 傷つきはじめた
痛い 痛い 痛い

口腔には、ビードロの破片が うねり うめき声しか
出せないことに気がつきはじめた

空から 一滴の水滴がこぼれはじめ ガラスが溶け始めた
やわらかく やわらかく 体をつつむ

その時、自分が おはじきの 極彩色の おはじきの 一片 となっていた
たたかれる たたきつけられる
その恐怖に震え 袋の中へともぐりこむ

でも、やがて とりだされ とばされ 別の おはじきと たたかれる

胸の中の 肺の一部が押しつぶされる もうどうしようもない
このまま おはじきとして その一生を終えるのか?
それとも、もう一度 肉体を破水させ 別の何かに 回帰するのか?

いつまで、待てばいい?
待っていても なにも起こらないという恐怖が恐怖する

カチカチ と 袋の中で思想する

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