左官の息子/yumekyo
 
女の子を好きになった
争いに勝ったのは僕のほうだった
僕が放課後にずっと部屋に入り浸っていたのを知って
彼は顔を真っ赤にして怒った

左官の息子は
中学に入るとグレ始めた
タバコをふかしながら原チャリに乗って
夜道をぶらぶら走っていた
僕は近づくことが怖くなった

左官の息子は
僕よりずっと早く大人のずるさを覚えた
バスケ部の不良グループから皆をかばうと大風呂敷を広げながら
最終的には連中の忠実な仲間を演じきった
おかげで随分と退部者が出た

左官の息子は
結局親父の仕事を継ぐことはなかった
僕は街の高校に進んで
彼と離れることを選んだ
田舎を出ることを考え始めた
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