変換/寒雪
 


桜色という言葉が良く似合う
満開の桜並木の下で
きれいねと呟くきみの言葉に
そうだねと頷くぼくの言葉
言葉がぼくの体から離れていった時
ぼくの頭は言葉が思っているほど
そうだねと思っていなくて
ぼくは頭の上から無口に舞い散る
桜の死骸を無意識に払いのける


六月に発熱した太陽の
時差ぼけな体温が
八月のぼくらを取り囲む
エアコンもない公園の木陰に
腰を下ろして
暑いねとこぼすきみの言葉に
本当だねと返すぼくの言葉
僕の体が心に留める気持ちの大きさを
言葉は受け止めることが出来なくて
ぼくは全身の毛穴から逃げ出そうと
我先争う体液の雫を右手で拭う
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