百貨店/紀田柴昌
 
百貨店にいる。
2階建てで、だだっ広し
1階だけで、2日もかかる広さだ
にもかかわらず、薄暗く床はぬめっている

天井から雫が滴れててくる
何色か? わからない
もしかしたら、自分が盲なのかもしれない

とにかくも、滴れているには違いない
両脚が、「ずずり」とひきずるように重くなる
エスカレータで2階へ上がった時
大きな波が襲ってきた
両腕が なくなってしまった両腕で
何かにしがみつこうとするが
指に感触があるだけで、押し流されてしまった

雫は もう滴れてこない
すべて流れ去ってしまったからだ
床は いまだぬめっている

どうすることもできず、たちどまり
夢の中へと 引きずりこまれてしまう

どうすることもできずに


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