白い豹/藤崎 褥
 
さである。オープンカーはその用途から、屋根を外しても、それほど風が入らないように作られている。
 なので寒い時には、屋根を開けてもヒーターを直接体に当たるように吹かしておけば、意外と平和である。
 だが、暑さだけは上からやってくる。逃げ場が無いのである。
 そして、文明機器の中で熱中症に苦しむという、ちょっとした矛盾に苛まされる事になる。

 では、春や秋は平穏なのか?
 …実はそうでもない。

 春は花粉や桜、秋は虫や枯れ葉が天より舞い降りてくる。
 意外にオープンカー乗りは晩秋から冬を愛好するのである。

 更にバスが余り居ない道を選ぶことも重大である。
 屋根が無い為に周囲から丸見えなのは仕方ないとしても、やはりバスのような完全に真上から多数の視線を浴びるのは、なにやら不穏な雰囲気を感じずにはいられないのである。フッと顔でも上げようものなら、不特定多数の人と視線が合ってしまう。

 なかなか、オープンカーも楽ではない。
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