檸檬少年と優しい涙/千月 話子
檸檬の木の下
鈴なりの黄色
緑の葉陰から落下して
ジューシーフルーツ
味わうには酸っぱ過ぎて
口角でしかめ面 する
突風吹いて 気まぐれにつむじ風
旋回して搾取する
自動ジューサー
受け皿も無く 服はずぶ濡れ
白いシャツは薄黄緑に
少し得した染色代だと思えばいいこと
毎日毎日 啓示のように
少年の上にだけ降る
レモン水の 雨、雨
一ヶ月もしたら
全身が輝くように漂白される
羨ましい 肌
唾液腺を刺激する
爽やかな消臭剤を身に纏い
もう誰一人交われないと
落ちる雨を見つめながら
痛いのか 悲しいのか
解らない 切な
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