泥が流れる/
紀田柴昌
息も絶え絶え
目も見えず
もう跳ねる力もつきかけてきた
絶命 絶命する その瞬間
天井の水の溜まり場から
ひとしづく 水滴が 舞い降りた
底の泥水が 清浄な湖畔に見えた
僕は ゆっくりと 身体の力を抜いた
天井の美しい水も、底の泥水も
清浄な湖畔も すべて消えていた
いや、もともと そのようなものは無かったのだ
僕は 無な世界に存在していた だけだったのだ
最期に そっと見えない目を 閉じた
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