夜は水/紀田柴昌
 
夜は水
流れて堕ちて底を這いずり回る
やがて 蒸発して 上流に戻り 朝となる

眠りと目覚めの境目に
流れ止まり 流れゆく
明日は夕べに 流れつく

山の様なビルの境目に
一瞬の永遠を求め
虚しく消えゆく
地下水のごとく

明日は 消失してゆく 鉛の水
今日の夕べは 石の様に流れてゆく
一瞬の永遠。

頭の中の痛みが消えゆく事は無く
ふわふわと 這いずり回る

眠りの中に その安らぎを與る日は
無希望の望み

      *

物を言う事は 自身の中を吐き出す事。
そして 吐き出した物に自身が無い事に気づく

只、そこにある場所に存在するといふ
確証を與る事を 與た事に気づく

      *

眠りが襲い来る
朝を迎えに来る
希望をしていない朝を持って来る

眠ることは 恐怖と同等

何故ならば 朝が来るからだ

朝が来て 初めて眠る事ができる

      *

夜は水
流れ落ちて漆黒の花園へ消えゆく
気づけばそこに何も無い事に 気づく
朝方に
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