光陰/さき
イエローサブマリン
を聞いていた
煙の向こう
私が生まれる前の出来ごとは
当然知るはずもなく
知らないことだけが
美しいのだと
信じていた
あの頃
私たちは若かったのか
知ったかぶりをする者と
ただ無知であることを誇る者
確かにお似合いだったのだろう
誰かが言った
カラカラと
音を立てて
季節は過ぎていった
扉はまた閉まる
私は閉まる音で漸く
過ぎたことを知る
暖かい貴方の
胸を思い出す
始まり
もうすぐ
雪が積もりだす
ベランダ
あの日々の全てが
もはや陽炎
珈琲に落とす
ミルクにもならないから
今日この瞬間にマグカップ
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