食卓の岸辺/こしごえ
 


しじみはしゃべらないけれど、
しじみ同志にしかわからない事があるのかも
しれない。しじみにはしじみのことばがあっ
て、いまも会話をしているのかもしれない。

海の風に立ち
素肌は陽に透けている
砂浜の真砂をにぎった
砂時計は空に反射し
水平線をみつめ湾曲しんわりだ
だれひとりいない岸辺に
かもめがないている
まるい食卓で
あおむくわたし
めぐることのない道のりの終着点
きこえて来るのは暗ぁいさざなみ
さようならかもめさん
出会えましたね
と手をふりふり
あちらへみえるのは不二山。?

しじみに黙礼をする
しじみは黙礼をする
蝶番が声も無く
飛び去る
海原のしじまへ

うしなったいのちは二度と帰らない
この手にのこる喪失と
螺旋の記憶にそう
空耳の骨芽細胞のきしむ光合成

ある縁側からみえる黒雨のしずけさ
遠雷のゆくえ
風はなぎ
いつまでも、訪れないだろうか
本日の夕餉は
ひとわんのしじみじるをいただく









戻る   Point(4)