霧の顔/殿岡秀秋
 
ら羽を育てる

ぼくが死ぬ間際になると
過去の感情が
その場面をともない
湖に大きな波となってうねるだろう

蛹から抜けてぼくは飛び立つ
湖面の上で羽根を振るわして
重なる波の
行方をみおくる

霧が
湖をだくのは
生まれてくる子どもを
受けとめるのに似ていないか

重くても
泣きやむまで
あやしつづける
母のように
霧の顔が微笑む








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