霧の顔/殿岡秀秋
酔いすぎたあとの朝の目覚めは
透明な悲しさ
霧の湖の水面に
さざなみがたち
底がゆれる
どこまでも沈めるようでいて
波間にただようしかない
ぼくの影はぼくの形から
女の長い髪が広がるように
はみ出している
湖の底に引き込まれそうな感じが腹のあたりにきて
波紋の先が喉のあたりに
剃刀のようにあたって
剃られてくと
からだの芯が冷たくなる
このまま時間という湖に
浮いているのか
黄色くなった葉がおちてきて
目の前でゆれる
よくみると
赤や緑の小さな虫が
葉の中に埋もれて死んでいる
ぼくは葉を集めて身をくるみ
蛹になる
その中で
眠りながら羽
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