省みて/朧月
 
あの日母が
私を見つめていた瞳が
なにを想っていたかが
ふいに想像できた

歪んだ方向しか
見ようとしなかったあの頃の私には
真意なんてどうでもよかった

気をつけていきや
そう言われたのに
キーをつけないと
車ははしらんと答えた

ばかなんだけど
そんなことを得意げに
言わなければ
発進できなかったごめん

母も母以外の大人も
私の敵ではないと
思った今日の日
私は教えるってことをした

だれかに伝える
作業はまず自分の
深い場所へかえってゆく
ということで

あの頃の私の
姿が思い浮かんで
母の瞳に答えたくなった
ありがとう いってきますと


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