あなたが求めたモノクロームの断絶/真島正人
 
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……結局

そんなものはなかったのだと

あなたはため息をついた

底冷えのする10月

炎で焼かれたような歳月が朽ち果て

それが桟橋のように見えるとき

あなたはやっと暗室にいた

守られているかのような暗闇に

御伽噺をたくし

なけなしの財産をはたいた末に

手に入れたフィルムで

あなたは撮影した

夜の街を

夜の人を

夜の空気の中に粉になった言葉に出来ない悪寒を

そこから照射されるはずの

ほんの小さな爪あとのような

なにか

なにか

なにか

教え子になり教師になり


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