メザシ/ナカツカユウリ
父のためにメザシを焼いている。
メザシから出てくる
もうもうとした煙
父のためにメザシを焼くなんて
つい最近までは
思いもしなかったなあ
留守中の父が戻ってくるまでに
焼いておいて差し上げる
私のお腹を覗くと
私の胃の辺りから
それこそ
もうもう
と煙を出すので
モーツアルトをかけた
馬鹿になるのだ
馬鹿になったところで
メザシはよい匂いを放ち
よい焼き色を見せた
テーブルに運ぶと、
朝ごはんのパン屑がそのまま
ふきんで拭く
静かな昼時
私が知らなかった静かな昼
飛行機の音だけが現在を響かせ、
遠くで私の泣き声が聞こえる
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