メザシ/ナカツカユウリ
 
父のためにメザシを焼いている。
メザシから出てくる
もうもうとした煙

父のためにメザシを焼くなんて
つい最近までは
思いもしなかったなあ
留守中の父が戻ってくるまでに
焼いておいて差し上げる

私のお腹を覗くと
私の胃の辺りから
それこそ
もうもう
と煙を出すので
モーツアルトをかけた
馬鹿になるのだ

馬鹿になったところで
メザシはよい匂いを放ち
よい焼き色を見せた

テーブルに運ぶと、
朝ごはんのパン屑がそのまま
ふきんで拭く
静かな昼時
私が知らなかった静かな昼
飛行機の音だけが現在を響かせ、

遠くで私の泣き声が聞こえる




戻る   Point(9)