Queeeeeeen/salco
早馬と女
南の国から女がやって来たのはそれから十日も経った頃だった。
早馬は本当だったが陸続きではなかったので、元侍医長が旅程から若干
の紺碧と波頭を割愛したのは、恐懼のあまりに働かせた罪なき縮尺であっ
たろう。
しかし女は決断と支度とに中三日を要し、挙句には助手を四人帯同する
と言い出してまず早馬の迎えの者を驚かせ、更に出立の当日は犀でも入っ
ているのかという木箱を別雇いの荷馬車に積載してもっと驚かせ、港まで
の運賃、港からの船賃は勿論、それを船積する為の人足代まで要求されて
は、出るのは冷や汗ばかりで二の句も継げぬ次第であった。
こうして帰着してか
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