生まれた家/小川 葉
 
なって
詳しく聞いてみると
いるにはいるけれど
休みのたびに
仙台に遊びに行って
困っているのだという

なんでも仙台に
ほれた女がいて
家を出て行くとか
孕ませてしまったとか
言っているのだという

けれどもこの店も
自分が生きているうちなので
それならそれでいいと
店主は笑って話してくれる

本心かもわからないまま
店主にもらった
青い合羽を着て
雨の商店街を後にする

しばらくすると
見覚えのある景色ばかり続くので
気になって戻ってみると
農業用品店で
通夜がおこなわれていた

窓からそっと覗くと
跡継ぎの息子なのだろうか
早いよ、と言いながら
泣いている

いずれにしても
私の生まれた家は
ここなのだった

泣きながら
喪主をつとめる跡継ぎを
遠くから見ていた

跡継ぎをしてくれて
ありがとう
おたがいこれから
どうなるかわからないけれど

私は青い合羽を脱ぎすてて
仙台の街へ帰っていく
 
 
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