堀口美樹さん/天野茂典
 
 

  せりあがる
  涙の塔
  くぐもってしまった声
  砂漠のように乾いて
  なぜ突然失語症になってしまったのか
  あなたをあたたかく送るために
  いきなり設えた舞台でわたしは
  司会をやりながら
  泣き出してしまったのだ 
  あなたの笑顔に魅かれてしまったためなのか
  あなたを愛していたからか
  原因不明の憑依現象 
  涙がぽろぽろ毀れて落ちた
  家鴨よ
  失ったわたしの言語の
  川を渡れ
  わたしはわたしの水脈にぶち当たったのだ
  それはとてつもなく深い井戸
  立ち眩みがするほどの距離なのだ
  マグマ
 
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