堀口美樹さん/天野茂典
せりあがる
涙の塔
くぐもってしまった声
砂漠のように乾いて
なぜ突然失語症になってしまったのか
あなたをあたたかく送るために
いきなり設えた舞台でわたしは
司会をやりながら
泣き出してしまったのだ
あなたの笑顔に魅かれてしまったためなのか
あなたを愛していたからか
原因不明の憑依現象
涙がぽろぽろ毀れて落ちた
家鴨よ
失ったわたしの言語の
川を渡れ
わたしはわたしの水脈にぶち当たったのだ
それはとてつもなく深い井戸
立ち眩みがするほどの距離なのだ
マグマ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)