カメラチック・ワーズ #3 - 図書館前/佐倉 潮
図書館前は池になっていて池の中に鯉が住んでいる。
何年も公共施設の一部として生きてきた鯉たちは、
人の気配を感じると、一斉に池のふちに近づいてきて
ぱくぱくと口をあける。
陸の子供は何かあげたいと思うが、あいにく手には何もないので
物足りない顔で親の顔を見る。親の方はまるで知らん顔をしている。
背もたれのないベンチが2つ並べてあって、今は2つとも空いている。
池の反対側には広場を挟んで文化会館がある。その建物の一角が
全面ガラス壁になっていて姿見ができるので、
若いダンサーの卵たちがいつも入れ替わり陣取って、
持参したラジカセの音楽に合わせ、かくかくと手足を動かしている。
通りすがりの老人がもの珍しげに、その様子を眺めるそぶりをした。
鯉の群れはやがて餌を取ることをあきらめて、
池のふちから散逸し始めた。
− In front of the lirary
Cameratic Words #3
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