記憶は生命ではないので/真島正人
 
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記憶は生きていない
記憶は動かない

ので

それは生命を超越し
古い古い地層に
固定されている

こことは違う時間では
時間は
固定されている

こことは違う時間が
それ一つだけで
教室を作っている

誰もいない部屋
大きな置時計

汚れてしまった
青春の
錆び跡



記憶は
暗室に似ている

ので

暗室に入っていく人間がいる

人間は動いている
彼の細胞がどんどんと
交代していく

彼は彼自身であり
暗室は
暗室そのものである

暗室はいつも暗室のそのままで
何一つ交換はしない


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