コメディ / ****'04/小野 一縷
 
かす 
曙の譜面 燃える証書 

光の歌に照らされて 浮き上がる 
真黒の文字の純潔を 絶対語感に解釈された
語群は高純度で 詩として結晶する 


幾つかの思考を麻痺 中毒させ 開いた瞳孔から
また別の幾つかの 思考を裂いて砕いた痕から
染み出してくる 微かな未来への標 
その抽象画を 文字で描く 
歪に構築された 言葉を 流し込み 
大量に 溢れるほど 変成してゆく
すると詩を成す 詩句の地層が
まるで狂気じみた瑪瑙の模様を呈する


たとえ このオイディプスの子孫が 
エウテルペの末裔であっても
この課せられた運命は 余りに軽薄だ
この精神の飛翔にとっては 軽すぎる重石の刑だ
この揚力には 因果の糸すら
煙のように 解れて切れる

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何日も 何月も 何年も
食事を摂らず 眠らず 黒々と醒めた眼で 
神話へ夢中で 落書をし続けた 彼は
罰として 二つの言葉を 永遠に失った 

「ありがとう」と「さようなら」






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