雨だれ/夏緑林
豪雨の中で
身を寄せるこの樹に
百年降り注いだ雨がどれほどか
俺にはまったく想像できないが
すればいいのだ
想像しろ
たとえば
いや例えるな
けれども
いや逃げるな
まっすぐに見つめるだけでは
改行し損ねるだけで
ゆっくりと発酵させて
まろやかに仕上がった試しもないの
で
あるなら
ば
この樹を離れて
豪雨のなかで
一時間だけでも立ち尽くしてみれば
ずぶぬれの
ことばが生まれるかもしれないが
この雨があと一時間
続くかどうかわからないと
言い訳している
自分が心底恥ずかしい
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