夜のトイレ/
小川 葉
わたしは
夜のトイレの
においが好きだ
扉をあける前の
懐かしいにおいと
便座にすわるときにする
芳香剤のにおい
背後には
紅白歌合戦の
賑やかな音声と
家族の笑い声
ふと気がつくと
ひとりきりの小さな世界
そこからいつでも
帰ることができた
終りがないと思っていた
トイレにいくたびに
あの夜が
今夜も
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