ちいさな収穫祭/天野茂典
 
 


  獅子唐を収穫した
  裏山の畑で
  猿が荒らしに来る
  ちいさな田畑
  青い実が籠に
  入れられ
  赤い鋏が収納された
  斜面を下る娘たち
  ススキの穂が
  金色に光って
  静止していた
  いつも揺れているとは
  限らない
  台風一過の青空の下
  娘たちの声は
  猿より明るい
  細い坂を下りてくる
  弾んだ足で
  ジーンズがよく似合う
  狡猾な猿たちの獲物は
  芋畑
  収穫はまだだ
  ススキの穂が散らないうちに
  もぎ取らなければ
  猿の空腹を満たしてしまう
  いままでの苦労が無駄になる
  畑仕事は麦藁帽子から
  始まった
  手間暇掛けて育ててきたのだ


  野猿よ
  娘たちの汗と鍬とを
  奪うのはよせ

  収穫された獅子唐を
  どんな料理で食べようか
  とりたての短編詩
  (緑の艶の

  単語たち



              2004・10・22
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